鯉口ちゃん生きる

おかーちゃんの人生はおかーちゃんのもの

されどおかーちゃんは娘と踊る

かかりつけの小児科は予防接種と乳児健診が金曜日の昼休憩中と決まっていて、その時間にいるのは予防接種を受けにきた低月齢の子たちばかり。これまでは娘がほぼ最低月齢って感じだったが、5ヶ月も過ぎるともっと小さくふにゃふにゃの子が出てくる。首がすわり背中がしっかりしてキョロキョロと周囲を興味深く見渡しては他所のおかーちゃんたちに愛想を振りまきアーアー話しかけてキャッキャと笑ううちの娘(とにかく外面がよい)などは、低月齢ベビーのおかーちゃんから見たら相当育って見えるらしく大層驚かれる。勿論予防接種は長く続くので娘より大きな子もいるのだが、先日の予防接種はとにかく低月齢らしき子が目立った、その待合室での話である。

ふと気付いた。待合室にいる親子はその時点で5組、受付列に4組、わたしと娘は3番目の受付だったためすぐに中待合に通され、そこにもう2組、それなりの数の赤子とおかーちゃんがいたが、膝や胸に乗せた赤子に無限にお歌を歌っているおかーちゃんはわたし1人だということに、わたし以外誰も歌っていないというか、そもそも自分が外でも構わずテケテケ歌を歌っているということに、そこでようやく気付いた。

以前も書いたが、実母が子供の前でいきなり歌い踊り出すことをとても嫌だと思っていたわたしは、娘を産んだらあっさり自分も子供の前で歌い踊るおかーちゃんになった。その歌とは、童謡など歌詞のあるものではなく、適当にリズムに乗せてランランるんるんテケテケ歌うだけだ。もしかしたら他所のおかーちゃんは歌詞のあるお歌を歌うのかもしれない。噂に名高いEテレの歌などを歌うのかもしれない。だがわたしおかーちゃんは早々にEテレに飽きてしまい、そのうち娘にチャンネル権を奪われてからでもいいかと日々アニメか2.5次元の舞台を流したりしている。そのあたりの歌にしても、わたしは音だけから歌詞を聞き取るのがとにかく苦手なので、メロディ以外の何も思い出せない。で、結局ランランるんるんテケテケ歌っている。

ほんとに、ずっと娘に向かってランランるんるんテケテケ歌っている。

家ではずっと歌っているし、気付いたばかりだが小児科の待合室でも無限に歌っている。この事実に驚愕したわたしは夫に「わたし小児科でも歌ってたよ、そして歌ってるおかーちゃんわたしだけだった」と恐る恐る報告したら「鯉さんスーパーで買い物しているときもずっと歌いかけてるよ、他所のおかーさんは誰も歌ってないのにうちのおかーさんはずっと歌ってるなと思ってた」と返されてさらに驚いた。

確かに小児科の待合室では、テケテケ言いながら赤子を膝に乗せ、上下に小刻みに揺れながら左右に振れて「MCハマー」などと言っているおかーちゃんは他にいない。はたまた高速で「テッテッテテレッテッテテレレテッテッテテテッ⤴︎」と歌いながら「マリオ30秒前」などとキメて揺れてるおかーちゃんも他にいない。他にいないことに驚いたし、こんなことを外でも無意識でやっている自分に驚いた。

多分、他所のおかーちゃんも大なり小なり外で歌っているのだと思う。それはもっと小声だったり(断っておくがわたしだって大音量で歌ってはいない)するのかもしれないし、ある程度まで月齢が進んだ子のおかーちゃん特有なのかもしれない。低月齢の赤ちゃんは基本的に何に対しても無反応なので歌うという選択肢があまりないのかもしれない。現に小児科で並んでいる間、娘に全力の愛想を振りまかれた4ヶ月ボーイのおかーちゃんは「うちの子まだ2回ぐらいしか声出して笑ったことなくて……5ヶ月になったら笑いますかね?」と、娘が声を出してケラケラ笑う様を目の当たりにして驚愕していた。

ではわたしもここ最近の、娘の反応がすこぶるよくなってから歌うようになったのか?と聞かれると、まあ結構ずっと歌ってます……という感じである。だが娘は、マリオ30秒前もMCハマーも無反応だ。オリラジとハライチとジョイマンと小島よしおのネタが入り混じった歌も(子供が芸人の歌ネタを好む理由がよく分かった、歌いやすいのだ)、風呂上がりに「アッチッチアチッチアッチッチ」とカップ麺のCMのメロディに乗せて歌っても、とにかく思いついたメロディをテケテケ歌うだけなのでそれが笑点のオープニングでもトトロでも刀ステのダンサブルな真剣必殺曲でもようこそジャパリパークでもポプラの木にはポプラの葉でもなんでも基本的に娘は無反応だ。歌詞がどうとかメロディがどうとかではないからだ。それこそEテレの洗練された子供向け音楽なら情緒に引っかかるかもしれないが、おかーちゃんが適当に歌う歌だけでは微動だにしない。無だ。チベスナだ。もしくは無視だ。ここにダイナミックな動きが加わることで娘は大爆笑するわけだが、さすがに外ではそこまでダイナミックに動けない。「娘も喜んで筋トレにもなって一石二鳥ね!」と8キロ近い娘を抱っこしたまま反復横跳びなどできない。なお反復横跳びはすぐ腰にきたので数回でやめた。なので歌だけを歌うわけだがそうすると無反応なのだ。

で、ここまで無反応だと心が折れそうなものだよなあ、と考え、わたしは娘を喜ばせるためだけに歌い踊っているわけではないのだな、「おかーちゃんは君の相手をしていますよ」というアピール、「おかーちゃんは君を見ていますよ」という語りかけ、「おかーちゃんは君の側にいますよ」という位置主張、その他諸々、コミュニケーションの一環であり、言葉の通じない赤ん坊と交流を図る場合、「言語」より「音楽」に頼った方が分かち合いやすい気がするからだな、ということに気付いた。まあ小難しいことを言ったが、おかーちゃんは歌い踊っていた方が色々と楽なんだろうなということだ。だって歌っているときおかーちゃん何も考えていないからね。脳みそパヤパヤだからね。だから外でも気にせずテケテケ歌うのよね。娘と自分の2人だけの世界で生きているから、外と中の境界がどんどこ曖昧になっている。

 

もっと月齢の幼い頃、おかーちゃんビギナーは娘に何を語りかけたらいいかいまいち分からなかった。そもそも産前は、赤ちゃんに赤ちゃん言葉で語りかけるとかわたしにできるんだろうか……と思っていた。実際すぐできたわけではないし、最初は娘の名前を呼ぶことさえまごつくレベルだった。赤ん坊と触れ合った記憶は平成に入ってすぐ生まれた年の離れた実妹が最後なのだ。遠い昔だ。なにせもう平成が終わる。

相変わらず何を語りかけたらいいかは分からないが、ようやくスムーズに名前だけは呼べるようになった頃、それは娘がNICUから退院し、ようやく彼女と一緒に家に帰ってきた頃だった。出産5分後には連れていかれて以降10日、空調も湿度もその他全てを厳重に24時間体制で管理されたNICUにいた娘は、いきなり大きく変わった環境に落ち着かず、ずっと身体を強張らせて泣いていて、抱っこしていないとどうにもならなかった。抱っこして背中をトントンし、ユラユラ揺れ、ふんふんスクワットをして、なんとか娘を落ち着かせようと必死だった。歌は、その必死ななだめすかしの一環だったように思う。

なんとか泣き止んでくれ、落ち着いてくれ、そして具合が悪いとかどこか痛いとかで泣いてるわけではないのだと教えてくれ、ただ気に喰わないことがあるだけであってくれ、死ぬような何かが起こってるわけではないんだと教えてくれ、頼む、頼むよ。

そういうおまじないだったのかもしれない。

……というのは少々きれいにまとめ過ぎだ。もちろんおまじないの側面もあるし、発端はそこだとも思うが、そうではなく。

 

おかーちゃんが娘に歌う歌はツイッター。フォロワーは娘1人。でもツイッターだから基本が独り言。たまに娘からリプライがつくこともあるしいいねをもらうこともあるが、それが狙いではなく、ただ自分がつぶやきたいから呟いている。おかーちゃんはツイ廃。だから外でも家でもベラベラ呟きと言う名の歌を歌いつづける。他所のおかーちゃんが歌わないのはツイッターをしていないかツイ廃じゃないから!多分みんなインスタをやってる!オタクおかーちゃんはオタクおかーちゃんだからツイッターが大好き!だから洋楽のお洒落な子守唄とかじゃなくマリオ30秒前とかやるの!以上!

なので今日もオタクおかーちゃんは、娘に向かってブイブイ歌を歌います。テンテーンッ、テケテンッ、パフッ!

 

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離乳食、ちょっとずつ飲み込み始めたと同時に、生えてきた歯でスプーンをガジガジ噛み倒し、何よりもエプロンに夢中。

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今日の結果:一番好きな離乳食は湯冷ましです!

 

嘘喰い 49 (ヤングジャンプコミックス)

嘘喰い 49 (ヤングジャンプコミックス)

 

ヤンジャンアプリで全話無料だから!というダイマを受けて読んでいる(とても面白い)のだが、ちょうど今流しているアニメがカードキャプターさくらだったので、あまりの世界観の違いに自我が崩壊しそうである(面白い)。

ダンサブルな真剣必殺。娘、現時点では長谷部推しの模様。分かる。