鯉口ちゃん生きる

おかーちゃんの人生はおかーちゃんのもの

オタクおかーちゃんは物語があれば生きていける、だってオタクおかーちゃんだもん、でも月餅、おまえは無理だ

妊婦時代、「つわりは大丈夫?」と聞かれた。とにかく聞かれまくった。

実際興味があるかないかは関係なく、妊婦と持てる話題というとやはりつわりが鉄板なのだろう。そして世間一般の「妊婦の辛いこと」のイメージなんだろう。実際わたしもそう思っていた。

だが、わたしは比較的つわりが軽く、一回ぐらいは吐きもしたが「なにも食べられない、もう無理……」と便器にしがみつくことがなければ「ずっとこれを食べていないと死ぬ……気持ち悪い……」ということもなく、ただ毎日食べられるものが違って「今日は白米無理」「そうめん見たくもない」「フライドポテトなら食べられるかも」「パイナップルケーキが食べたい、通販だ、何度も買うのは大変だから一番でかいサイズだ」「一個食べたらもういらん」「月餅、月餅食べたいから通販するか、でも明日には食べたくなくなっているかも」「昨日食べたかった月餅などやはりもう要らん、買わなくてよかった」という感じで、つわり博打だな~明日は何が食べられるかなハム太郎、と思っていた程度で平和だ。

ではなんの問題もなく子供を産んだかと言ったら、もう全くもってノー、つわりが軽いぐらいでは割に合わない、身体が出産に向いてない、と百回ぐらい思った。

産前、わたしは妊婦トラブルの総合商社だった。

妊娠8wの切迫流産・2週間自宅安静に始まり、16w安定期に入ってすぐに妊娠による血流の変化で子宮筋腫が変性し激痛のため1週間入院、元々多発性子宮筋腫だったのが妊娠で4センチと6センチに成長、お世話になるつもりだった無痛分娩対応の個人クリニックではもう面倒が見きれないと救急車で総合病院に運ばれてそのまま転院、そこでは無痛分娩を行っていないのだが産院を選ぶ余地もなく17wで子宮筋腫合併妊娠というハイリスク妊婦に、退院後ようやく初めて胎動を感じたのもつかの間、間髪入れずに20wで妊娠糖尿病の診断がくだり、食事制限と毎食後の血糖値検査を行うも21wでインスリン注射を開始、自宅で職場で食後の血糖値が高ければ膨らんできた腹に注射を自己投与、日々苦しくなる妊婦生活と糖質制限食の献立・調理と血糖値管理に仕事のストレスがピークに達したのか22wで切迫早産による2週間自宅安静リターンズ、もう無理だと思い会社に産休前倒しを申し出るも前例がないと渋りに渋られそれでも負けずに交渉に次ぐ交渉に次ぐ交渉という名の喧嘩を制し無事前倒し産休に入った28wのわたしはもうズタボロであった。一番辛い原稿の修羅場より辛かった。いや辛さだけ言うと原稿の修羅場の方が辛かったかもしれない。どっちも過ぎれば忘れるという点では同じである。

なにが言いたいのかと言うと、妊婦との話題トップのつわりはなくてもこれだけしんどいことは多い、でもそれをいちいち説明するのも面倒くさいだってそもそも相手が聞きたいのってつわりが本当に辛いかどうかじゃないもん、でもほんとにこれだけ辛いので世間話は聞いてくれなくてもいいから産休は出産予定日6週前からっていう無理ゲーを法改正してくれ、ということである。

でもすごく辛かったこと、特に筋腫と妊娠糖尿病については、別記事にすると思うので世間話を聞いてほしい(ほしい)。

 

さて、これだけトラブル総合商社だったため、前倒し産休の他に合計5週間、自宅と入院で安静を余儀なくされた。

初産で右も左も分からない中、医師に「とにかく安静に、トイレ以外は可能な限り動かないで、風呂も毎日は入らないように」と言われると妊婦ビギナーはろくでもないことを考えがちである。なにせその後には「じゃないとお腹の赤ちゃんがどうなるか分かりません」という言葉が必ず隠れているからだ。真実という名の脅迫だ。おそろしい。

だがわたしは、考えても埒が明かないことに時間を費やすのは嫌いだし、極力冷静でいたいため、不安に縛られるのも嫌いだ。嫌いだからといって不安なことに思いを馳せたり縛られずに生きていけたら苦労はしないと思われそうだが、わたしはオタクなので現実から己を切り離して物語の世界に没頭するのは大得意なのだ。

現在はスマホがあり、通販があり、ネットスーパーがあり、電子書籍があり、動画配信がある。もうベッドかソファに寝転んでいるだけで物語にアクセスでき、不安など忘れて物語に耽溺できるのだ。あーオタクでよかった。

僕のヒーローアカデミア コミック 1-18巻セット

僕のヒーローアカデミア コミック 1-18巻セット

 

切迫流産で自宅安静中、もっとも動いたのが玄関から寝室まで大人買いしたヒロアカ全巻を運んだこと。アニメも全話見た。 ずっとジャンプを購読しているが脱落気味だったのだ。

コウノドリ(16) (モーニング KC)

コウノドリ(16) (モーニング KC)

 

夜中、原因不明の下腹部激痛に不安になりながら読み返したコウノドリ16巻で「あ、これ多分子宮筋腫の変性だわ」と理解する。その後も度重なるトラブルに「もうコウノドリに取材されて漫画化されて鬼灯さまと同じ誌面に掲載されて綾野剛にドラマ化してもらうなどしないと……」と本気で思っていた。

私たちは繁殖しているイエロー (角川文庫)

私たちは繁殖しているイエロー (角川文庫)

 

子宮筋腫の変性で入院している間、電子書籍で全巻読んだ。主に出産シーン×4回と新生児期の話を何度も読んだ。なんなら陣痛来てる間も体験談を確認するために読み直した。

 入院になったわ~と妊娠を知らせていた友達に連絡したら「ドラクエでもしたら?今死ぬほどハマってるんだけどさ」と言われた。ハードがないので断念したが、そう言ってくれてほっとしたのを覚えている。

大奥 コミック 1-15巻セット

大奥 コミック 1-15巻セット

 

元々購読していたものの結婚を気に処分し、以降はずっと漫画喫茶で読んでいたのだが、産後はもう何年も漫画喫茶行けないなと気づいた時に電子書籍で全巻買っていた。ちょうどポイント還元キャンペーン中で、このとき獲得した9000ポイントほどでまた電子書籍を買いまくった。

産休に入ってからの漫画喫茶行き納めで、やはり毎週のジャンプで脱落していたこの漫画がすごいを読み直した。 

「レンタルコミックはどうだろう?」という試みで借りてきた、やはりジャンプでは脱落していたこちらを読み直した。結果として、漫画を手に持つことが困難だということが分かった(特に産後)ので、レンタルコミックは一度しか活用していない。

ロームキャスト&dアニメストア&テレビの装備で人生で一番アニメを見まくった。なお、このクロームキャスト&dアニメストア&テレビの装備は、今なお産後育児中のわたしを大いに救いまくり続けている。全ての妊婦オタクに薦めたい。

HiGH & LOW THE MOVIE3~FINAL MISSION~(DVD)

HiGH & LOW THE MOVIE3~FINAL MISSION~(DVD)

 

dTVで見られるだけ全部シリーズ履修し、自宅安静が解けてから観に行ったザム3が映画館で一番最後に見た映画である。まだまだ安室のオンナにはなれそうにない。

彼方のアストラ コミック 全5巻 セット

彼方のアストラ コミック 全5巻 セット

 

産前、臨月に入ったわたしが出産以外で最も心配していたのは「彼方のアストラ最終回のときに産気づいていたらどうしよう……」「その場合、もはや使命のように行なっていたツイッターでの最新話更新告知ができなくなるのはどうひたら……」ということであり「頼むわたしが産気づくなどして最終回の告知が出来ない場合、わたしに代わってTLに告知を流してくれ……」と妊娠を伝えていたオタ友にお願いしていた。無事最終回を読め、告知もできて本当によかった。

 

ところでつわり時期、結局買わなかった月餅だが、確かに翌日は「もう月餅などいらん、買わなくて正解だった」と思ったものの、以降五回ぐらい思い出してはめちゃくちゃ食いたくなった。妊娠糖尿病のときの糖質制限のときも思い出したし、産後の今もたびたび思う。だがわたしが食べたい月餅はその辺では売っていないのだ。

その昔、とあるオタク友達と初めて「ではお酒でも飲みましょう」という運びになった同人イベント前夜、そのとき彼女に「差し入れです」と頂いたずっしり重いホテルオークラのステキ月餅を翌日、一人宿泊していた新橋のビジネスホテルでコンビニのインスタントカップ味噌汁と一緒に朝食にしてめちゃくちゃ美味しかった、やや二日酔いのイベントの朝にぎっしり詰まった甘いあんこと染みいる味噌汁の組み合わせはほんとにうまかった、と、もう「上京」「オタ友」「飲み会」「ビジネスホテル」「同人イベント」「幸せ朝ごはん」というこの世の自由総決算と密接に結びついた「月餅」、今はとても叶わないそのノスタルジックフリーダムと一緒に思い出してはやっぱり通販しておけばよかったか……と今晩も焦がれてしまったので、博打みたいなつわりでも食べたいと思ったものは全部買っておいた方がいいと思う。

月餅、それはオタクおかーちゃんの自由の象徴。

 

進撃の巨人 コミック 1-25巻セット

進撃の巨人 コミック 1-25巻セット

 

 

新刊出るたびに話が分からなくなる。妊娠中も全巻読み直した。なお「もう死ぬか……そろそろ死ぬか……」と思い続けたわたしの推しはまだご存命だ。